仕様と施工

技術資料

防水シートに関する規格や防水層の性能評価方法など

付4.屋上緑化用メンブレン防水工法の耐根性試験方法

1.はじめに

(1) 本試験法の適用範囲

 本試験法は、屋上スラブ・ベランダ等に施工する屋上緑化用植栽の下部に施工し、建物の防水性を確保するメンブレン防水工法に対する植物の根・地下茎による貫通抵抗性の試験方法について規定する。

(2) 耐根性の要求事項

 耐根性を要求されたメンブレン防水工法は、その屋根表面の防水層、防水層の角部分、防水層の結合部分、重ね合せ部から根・地下茎の侵入や貫通による損傷に対し防水層を保護しなければならない。

(3) 供試植物の種類

 この試験方法で適用する植物は草本および木本植物とし、その両方の試験をもって評価する。

(4) 試験方法外の扱い

 この試験方法で適用する植物種類で規程にない植物等を試験に用いる場合は、当事者間の協議とする。

(5) 耐久性の考え方

 本試験方法は、防水工法が耐根性試験の根・地下茎による侵入・貫通を受けるか否かの試験で、防水工法の長期に渡る耐久性を評価する方法ではない。

2.用語の説明

本試験法で、基本となる用語を表1に示す。

表1 基本となる用語
用 語 説 明
(1) 草本植物 養水分を導き通す組織や固い繊維からなる組織が発達せず、柔らかい茎を持ち、地上部は多く場合1年で枯れる植物。しかし、1年以内では枯れずに地上の一部や地下部分が生き残り、翌年も葉を出し成長するものもある(木部が二次的肥大成長しない植物)
(2) 木本植物 養水分を導き通す組織や繊維が枝や幹でよく発達し、多年生の地上または地下器官を持つ植物(地上部が木質化し肥大成長する植物)
(3) 耐根シート 生長した植物の根や地下茎が、防水層に侵入・貫通することを長期的に防ぐシート
(4) 試験用コンテナ 耐根試験用試験体を設置するためのコンテナ
内側コンテナと外側コンテナの2つ構成される
(5) 土留用不織布 試験用コンテナ中に充填した土壌が、試験中に排出されることを防ぐための養生用不織布

3.試験体

(1) 試験体の構成

 耐根試験に用いる屋上緑化用メンブレン防水工法試験体は、防水層または防水層と耐根層で構成される。

(2) 防水層

 試験に供する防水層は、 a.「アスファルト防水層」、 b.「改質アスファルトシート防水層」、c.「シート防水層」、 d.「塗膜防水層」、 e.「その他」に分類される・

(3) 耐根層

 試験に供する耐根層は、主にシート状のものを用い、組み合わせる防水層と一体で施工して試験体とする。

(4) 試験体の施工

 試験体の施工は、次のとおりとする。
シート状材料では、試験体内に必ず3枚の重ね合わせ部分を設ける。塗膜系の液状材料では、試験体を一度に作製せず、24時間以上経過した塗り継ぎ部分を有する試験体とする。

(5) ドレン

 ドレン用の開口部は、原則として試験体側面に設ける。

(6) 比較用試験体

 比較用試験体は、JIS K 2207 (石油アスファルト)に規定する防水工事用アスファルトの3種を用い、厚さ 20 mm のシート状に成型したものとする。

4.試験用材料

(1) 試験用植物

1) 草本

 試験に用いる草本は、表2に示す植物とする。

表2 草本試験用植物
種 類 形状寸法
ノシバ
(Zoysai Japonica Steud)
土付き、切り芝 280 × 360 mm
クマザサ
(Sasa veitichii)
3芽立ち以上
コンテナ寸法
径 12 cm 深さ 10 cm 以上
径 15 cm 深さ 12.5 cm 以下

2) 木本

 試験に用いる木本は、表3に示す植物とする。

表3 木本試験用植物
種 類 形状寸法
タブノキ
(Machilus thunberqii)
樹高 1.5 m 以上
コンテナ寸法
径 21 cm 深さ 21 cm 以上
径 30 cm 深さ 30 cm 以下
ヤシャブシ
(Alnus firma)
樹高 1.2 m 以上
コンテナ寸法
径 15 cm 深さ 12.5 cm 以上
径 21 cm 深さ 21 cm 以下

(2) 植栽土壌(主要材料)

1)草本試験用土

 草本試験用土を表4に示す。

表4 草本試験用土壌標準配合表(主要材料)
種 類 材料名 形状寸法 配合比
用  土 火力乾燥赤玉土 小粒 50 vol%
松脂岩パーライト 粒径 1.7 ~ 5.0 mm 25 vol%
ピートモス 短繊維物 25 vol%
肥 料 N : P2O5 : K2O = 16 : 5 : 10 100 g/1 基
保水・排水層 黒曜石パーライト 粒径 4.0 ~ 25 mm
目詰り防止材 ヤシガラ繊維
外側コンテナ 湿性火山放出物未熟土

2)木本試験用土

 木本試験用土を表5に示す。

表5 木本試験用土標準配合表(主要材料)
種 類 材料名 形状寸法 配合比
用  土 火力乾燥赤玉土 中粒 25 vol%
火力乾燥赤玉土 小粒 25 vol%
松脂岩パーライト 粒径 1.7 ~ 5.0 mm 25 vol%
ピートモス 短繊維物 25 vol%
肥 料 N : P2O5 : K2O = 10 : 18 : 15 900 g/1 基
保水・排水層 黒曜石パーライト 粒径 4.0 ~ 25 mm
目詰り防止材 黒曜石パーライト入り
ネットパイプ
外側コンテナ 湿性火山放出物未熟土
土留め用不織布 ポリエステル 60 g/m2以上

(3) 試験用コンテナ

1) 草本用コンテナ

 内側コンテナは、縦 540 mm、横 240 mm、深さ 200 mm の寸法で、5面とも材質がステンレス板(SUS 304)のパンチングメタル(厚さ:1.5 mm、穴数・間隔:φ20 × 30 P)とする。
外側コンテナは、縦 620 mm、横 350 mm、深さ 260 mm の耐食性を有する穴のないプラスチック製で、排水口付きとする。

2) 木本用コンテナ

 内側コンテナは、縦 800 mm、横 800 mm、深さ 350 mm の寸法で、5面とも材質が亜鉛メッキ鋼板のパンチングメタル(厚さ:3.2 mm、穴数・間隔:φ30 × 40 P)とする。また、ドレンを設ける。
外側コンテナは、縦 1,000 mm、横 1,000 mm、深さ 450 mm の寸法で4面は材質が亜鉛メッキ鋼板のパンチングメタル(厚さ:3.2 mm、穴数・間隔:φ30 × 40 P)で、底部は、立上り 30 mmを有する亜鉛メッキ鋼板(厚さ 1mm)とする。また、ドレンを設ける。

5.試験方法

(1) 防水システム試験体の作成

1) 草本用試験体の作製

 草本用コンテナの内側コンテナ内部に防水システムを施工する。
底部には、シート状材料の場合には3枚重ね部、また液状材料の場合には塗継ぎ部を設ける。

2) 木本用試験体の作製

 木本用コンテナの内側コンテナ内部に防水システムを施工する。
底部には、シート状材料の場合には3枚重ね部、また液状材料の場合には塗継ぎ部を設ける。

(2) 植栽試験体の作製

1) 草本用試験体の作製

 ノシバは全面張りとし、クマザサは1コンテナあたり5株を植え付ける。

2) 木本用試験体の作製

 対角線上にタブノキ2本、ヤシャブシ2本を植え付ける。樹木とコンテナの距離は、コンテナ内壁面と根鉢のクリアランスを 50 mm 程度確保する。

(3) 植物の育成形態

1) 屋内試験

 温室内で育成する。

(4) 試験体の管理

 1週間に3回以上の巡回点検を行う。

(5) 試験体数量

 試験体数量は、草本類としてクマザサ4体、ノシバ4体の計8体(コンテナ)、木本4体(コンテナ)とする。
リファレンス試験体数は、クマザサ4体、ノシバ4体、木本4体とする。

(6) 試験期間

 試験は、草本および木本ともに2か年とする。
なお、中間観察として6か月ごとに防水層への根または地下茎の貫通および接合部からの侵入状況を観察する。

(7) 根・地下茎の侵入および貫通の観察方法

 中間検査は、コンテナ外部からの目視観察を行う。
試験終了時には、昼光のもと、10倍のルーペで防水層表面の観察を行う。

6.評価

(1) 草本および木本試験体

 試験体の防水層およびその接合部に根・地下茎の貫通、侵入が認められないこと。

(2) 比較用試験体

 比較用防水層に、根・地下茎の侵入、貫通が認められること。

7.報告

(1) 報告事項

1) 防水工法の種類

 防水工法の仕様、施工手順
防水工法の養生

2) 草本、木本種類

 容器の状形

3) 開始時期

 植栽の準備時期、準備期間

4) 試験期間

5) 植栽管理

 試験期間中の植栽管理方法(施肥等)
試験期間中の試験場所の温度状況

6) 中間観察

 観察周期・時期

7) 結果の評価

 根・地下茎の貫通の有無

8) 試験結果詳細

 比較用試験体の根・地下茎の状況(平面部、コーナー部、接合部用等)
試験体の根・地下茎の状況(平面部、コーナー部、接合部用等)
観察手法

9) 試験機関

 担当者